親族に対し、後見等開始の審判申立てを検討されている方は、以下の点にご注意いただく必要があります。
1 成年後見制度は、本人の利益・権利擁護のための制度であり、申立人等利害関係人の利益のために利用する制度ではありません。
2 後見等開始の審判申立てに関する費用は、原則的に、申立人が負担することになります(本人の財産から負担するのではありません。)。
3 成年後見制度には、3つの類型(後見・保佐・補助)があり、本人の判断能力の状態に応じた類型を選択して申し立てる必要があります。
4 本人がどの類型に該当するかは、家庭裁判所の判断によるものであって、医師の診断書や鑑定書に拘束されるものではありません。
5 後見もしくは保佐開始の審判申立てをする場合には、医師による鑑定が行われる場合があります。鑑定が行われる場合には、鑑定費用を納める必要があります。
6 審判開始申立書に記載した後見人等候補者が、必ず後見人等に選任されるとは限りません。また、希望していた後見人等が選任されない見込みになったからという理由で、申立てを途中で取り下げることは、原則として認められません。
7 保佐もしくは補助開始の審判申立てをする場合、申立人が付与を希望する代理権や同意権を家庭裁判所がそのまますべて認めるとは限りません(家庭裁判所が付与する必要なしと判断した代理権や同意権は付与されません。)。
8 家庭裁判所が選任する後見人等以外に、家庭裁判所の判断により、監督人(後見人等を監督する人)が選任される場合があります。
9 家庭裁判所が司法書士や弁護士などの専門職後見人または監督人を選任した場合には、その者に報酬を支払う必要があります。この報酬の額は、専門職後見人等の申立てにより家庭裁判所が決定し、本人の財産から支払われます。
10 親族が後見人等に選任された場合であっても、本人の財産管理並びに身上監護に関して、定期的に家庭裁判所に文書にて報告する必要があります。
11 後見等開始の審判申立ての主たる目的が、本人の不動産売却や遺産分割協議のためである場合、たとえ、その目的が達成されたとしても、後見人等の職務はそれで終了する訳ではありません(基本的には、本人が死亡するまで、後見人等の業務を継続することになります。)。
12 いったん、後見人等に選任されると、正当な事由がない限り辞任することはできません(家庭裁判所が認めない限り辞任できません。)。
13 後見人等が本人の居住用不動産を売却したり、賃貸借したりするような処分行為をする場合には、家庭裁判所の許可が必要になります(家庭裁判所の許可がない限り、これらの行為をすることはできません。)。
14 後見人等が本人と利害の対立する行為をするときは、家庭裁判所にその旨を伝え、特別代理人を選任してもらう必要があります(但し、監督人が選任されている場合には、特別代理人を選任してもらう必要はありません。)。
15 後見開始の審判申立てで、本人に一定額以上の流動資産がある場合、家庭裁判所が、まずは、司法書士・弁護士等を後見人に選任し、その後見人が、本人の日常生活に必要な一定の金額を超える現金を信託銀行に信託したうえで、親族に後見業務をバトンタッチさせる方法を選択する場合があります。